ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第4回(作品 no.1)
今回からは、さきに紹介した6点の作(「手とカード」シリーズ)について、
さらに掘り下げて見ていきましょう。
少し文章が長くなりますが、その中から参考になることが一つでもあって、
今後の制作に役立てば幸いです。

まず最初のこの作品は、二本の指でカードを挟み込むように支えています。
手が画面左下からぬっと立ち上がって、
大きく広がろう、膨らまそうとする動きで、
拡張感・膨張感の強いポーズをなっています。
手とカードとの関わらせ方=アイデアが明解で、
無駄がなく、力強い作品になっています。

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構造的に一番の特徴になっているのが、
中指とカード、それから親指へと連続した形が、
弓なりにしなりながら丸まって、
内側に大きな空間を作っていることです。(fig1-1)

また、このポーズは手のひらをいっぱいに広げて、
内側を見せていますが、
中指と薬指の2本が、外側から回り込んできて、
立体的な印象を演出しています。(fig.1-2)
ただこの作品では、手のひらと2本の指との明るさに差が弱いので、
面の向きの違いや距離感が出ていないのが惜しまれます。

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全体の形をシルエットとして見てみると、内側から外に向けて
大きく広がろうとしていることがわかります。(fig.1-3)
つまり「図(手とカード)」が「地(背景)」を
押し広げようとする形です。
このような「図と地」の関係が構図を考える上でとても大切です。

上右図はエスキース(アイデアスケッチ)の一つとして、
背景部を黒く塗りつぶしたときの効果を示したものです。
そうすると、「図と地」の関係、またポーズの動きの印象を
客観的に判断できることがあるのでお勧めできます。
また、逆に図の方を塗りつぶしてみるのも同様に有効です。

全体の形がシルエットになるように塗りつぶしてみたとき、
設定したポーズや、手とモチーフとの関わり方が分かりやすいようなら、
それは非常に描きやすいはずです。

上右図のエスキースを見ると人差し指が、
画面枠に触れていることが分かります。
もちろんこれは偶然でなく、作者が意図したものです。
B3画用紙の中央にA3画面枠をとるという、今回のメソッドでは、
このように図の配置に、神経を使った発想をよく見受けます。

エスキースをするときは、
画面枠の比率は正確でなければ意味がありません。
本校の学生は、ハガキなどの厚紙に、
画面の比率を正確に縮小して切り抜いたものを定規にして、
エスキース用の画面枠を描いて、
その枠内にアイデアスケッチをしています。
紙のサイズのB判とA判はともに√2矩形で、
比率は1:1.414(逆数0.707)です。

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最後に、この作品を成功させている大きな要因を解説します。
fig.1-4で示すように、このポーズでは、
手のひらの面とカードの面が
ともに右方向に傾斜しています。
この2つの面の響き合いがポイントです。

2つの面は平行ではなく、やや奥に狭まっていて、
奥行き感を強調しています。
また2つの面が若干ねじれるように、少しずらして配置することで、
奥行き感はより強く豊かになっています。
このように三次元の面の構成について、よく配慮されていながら、
fig.1-5で示すように、二次元の傾斜角度も、
全体の力強い伸張を意識して注意深く選ばれています。
それらの配慮が、スケール感を
高める演出として効果を上げています。

次回の作品は、今回とは対照的に
非常に構築的な性格が強い作品②を解説します。


byヨゾコブ
by yozokobu | 2010-05-16 10:01 | ステップアップ・デッサン
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