ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第5回(作品 no.2)
「手とカード」シリーズの2作品目の今回は、
カードを水平に持つ、というアイデアの作品です。
設定が明解で構築的な印象の作品ですが、
随所に繊細な配慮がなされた秀作です。

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fig.2-①は面的な変化の様子を示したものです。
指の間にカードを差し挟んで、カードを水平に保っています。
そのとき手とカードは面で接していて、
4本の指はカードに対して垂直に重なり、正面に並んでいます。
また手首の部分も正面を向いています。

ここで手の構造について、確認しておきましょう。
A点の辺りが親指の付け根になり、親指が動くときには、
この辺りが基点になります。
またB→bの線が、残る4本の指の付け根になります。
指の股の部分には間接がないことに注意しましょう。
人差し指から小指の4本が動く時は、
B→bの線から立ち上がるように捉えると、
動きが自然な印象になります。
このことは手を横から見ると、
指の付け根の関節がどこにあるかを確認できます。
この作例では手の構造をきちんと把握して、
階段状に連続する面の変化の「山と谷」を
しっかり押さえた上で描かれています。

作者は光の角度をきちんと設定して、
状況を分かりやすく演出しています。
fig.2-②は明中暗の3つの階調の分布を示すものです。
明暗の調子を面的な変化に沿って、
冷静にまとめていることがわかります。
つまり正面を向く部分には、日陰と日向の差、
特に中〜暗の調子を積極的に扱っています。
それに対して斜めの面には、少しひねりを加えて、
光源の方に傾けて、明るめの調子でまとめています。
また中指の先端や薬指の付け根に光が当たるように
配慮したことで、臨場感を持って状況が伝わっています。

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この作品の背景部は2つの直角三角形と
1つの長方形に分かれています。
このような配置は、非常に安定感はあるものの、
まとまり過ぎて硬くなりがちなので注意が必要です。(fig.2-③)

この作品のポーズは、手首を反らせて、
奥に向かって傾斜させることで、動きに変化を与えています。
さらに軽いひねりを加えて、
広がりのある立体的な印象に仕上げています。
また親指や小指にの形が、全体のリズム感に生気を与えています。
親指は斜め奥に倒れ込みながら、強く反り返って、
全体の直線的な形にニュアンスを与えています。 
小指が他の指からはなれ、少し緩んだポーズをとることで、
カードに触れている指の緊張感を引き立てています。
また中指と小指とのすき間が「地」を複雑に見せています。

この作例のように、背景部にはみ出るような部位は
モチーフの性格が端的に表れるので、
少しの配慮が非常に効果的に働きます。

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この作品を成功させている大きな要因は、
わかりやすく安定した構造と、
そのポーズをとったときに表れる表情を
しっかり重ね合わせて意識できている点です。
fig.2-⑤は形が大きく変化する稜線を示したものです。
fig.2-⑥はしわの流れや形の張りを丁寧に追っている箇所を
示しています。
面的な意識というと、「分割する」と考えがちですが、
それでは立体感は表せません。
異なる方向の面を連続させるという意識が大切です。
面の方向が変化した時に、どのような表情が表れるかを
観察することが大切です。
面的な変化をつなぐ表情が、描きどころになります。


byヨゾコブ
by yozokobu | 2010-05-23 16:21 | ステップアップ・デッサン
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