カテゴリ:ステップアップ・デッサン( 15 )
有色下地デッサンの技法②/デザイン・工芸科
デザイン・工芸科では、
入試課題の単なる反復練習のような授業ではなく、
生徒一人ひとりの将来に繋がる感性や表現力を高めていくために、
さまざまな授業を展開しています。
今回はその授業の1つで、
受験生にも実践しやすいようにアレンジした
有色下地デッサンのプロセスを紹介します。

①用紙を水張りする
画面全体に絵具を塗るので波打ちを抑えるために水張りします。

②エスキース&ライティング
明暗の調子が豊かに展開するように光と影を調整します。
明るく描いた部分が手前に浮き上がるので、
明暗の変化の境界が対象の中央寄りにあるようにライティングします。

③鉛筆でアタリをとる
本来は下地を作ってから描きますが、
それはなかなか難しいので、
まず鉛筆(2B~4B)で強めに描いておきます。
稜線や光と影の境を確認するために
最小限の調子(タッチ)を入れてもよいでしょう。

④水性絵具を画面全体に塗布する
下地色として紙の地が透ける程度に薄めた中暗色を均一に塗ります。
水彩絵具類(透明水彩・不透明水彩・デザイナーズカラー・
ポスターカラー)が使えますが、
アクリル絵具は後の作業がしづらいのでお勧めできません。

濃さの目安は先に描いた鉛筆が透けて見える程度です。
水性絵具に少量の墨を混ぜると透明な中暗色を作りやすく、
薄めた墨だけを用いることもできます。
ただ多少の色むらがあった方が空間感が増すので、
数色の絵具を混色してたっぷり塗るのが基本です。

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⑤パステル鉛筆および白色絵具で描き起こす(白色浮出)
作例では絵具で描き始めていますが、
慣れないうちはパステル鉛筆が使いやすいでしょう。
光が当たってはっきり明るい部分で
手前の位置から慎重に描き始めましょう。
パステル鉛筆は重ねいくと、
それ以上明るくならないように感じます。
その場合フィキサチーフで定着して白絵具に切り替えましょう。
フィキサチーフは30cm以上離して、
数回に分けて少しずつ掛けるようにすれば、
パステルの粉末が濡れたように透明になってしまうことを防げます。

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⑥定着後に再び水性絵具を画面全体に均一に塗布する
光に照らされている部分が白色に覆われたら、
フィキサチーフで定着して全面に中暗色をのせます。
順調に進めばこの作業をせずに完成とすることもできます。

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⑦パステル鉛筆および白色絵具で描き起こす
やはりはっきり明るく光が当たっていて
手前にある部分から描き重ねます。
白色をのせる範囲が広がりすぎないように慎重に。

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⑧光の方向を意識してさらに描き起こす
日陰の部分の反射光などの弱い明るさに
白色を入れてしまうと途端に光の方向が曖昧になって
立体感が損なわれてしまうので注意。
どうしても日陰の中を描きたい場合は
黒色のコンテなどで描くこともできます。
明部=白色、
中間=地色、
暗部=黒色
と異なる画材を使うことで明中暗の3調子を
明確に意識することができます。
(黒色:コンテ社PASTEL PENCIL 09 Blackなど)

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⑨完成
明るさが形態の変化に従って、
自然な印象で下地色に連続していけば完成です。

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by yozokobu | 2017-07-14 17:12 | ステップアップ・デッサン
有色下地デッサンの技法①/デザイン・工芸科
受験生のみなさん、
暑い日々が続いていますが体調など崩していませんか?
今回はステップアップデッサンシリーズの
『有色下地デッサン』を紹介します。

*  *  *

有色下地デッサンは中間色の塗面を下地にして、
白色で描き起こす(白色浮出)技法で、
中世ヨーロッパに多くの作品が残っています。

低彩度の中間調子の下地に
白色のコンテや絵具をのせると浮き上がって見えます。
そのとき下地色は後退するように感じられます。

前進色と後退色を効果的に組み合わせることで前後関係が生まれ、
立体感・空間感を表すことができます。
白色は塗り重ねるほど不透明に明るくなるので、
前に迫り出す効果が高まります。

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古来からの技法を現代の受験生に合わせてアレンジした
代ゼミ造形学校バージョンを紹介します。

[使用画材]
①白色パステル鉛筆
USA GENERAL'S社 チャコール・ホワイト no.558 や
FABER CASTELL社 ピットパステル 101 ホワイトなど
②白色絵具(アクリルガッシュなど)
③鉛筆(2B~4B)
④パネルに水張りした水彩紙
⑤面相筆と刷毛

[作業の流れ]
① 用紙を水張りする。
② エスキース。
③ 鉛筆でアタリをとる。
④ 水性絵具を画面全体に均一に塗布する。
⑤ パステル鉛筆および白色絵具で描き起こす(白色浮出)。
⑥ 定着後に再び水性絵具を画面全体に均一に塗布する。
⑦ パステル鉛筆および白色絵具で描き起こす。

次回は作例をもとにプロセスを詳しく解説します。







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by yozokobu | 2017-07-13 15:12 | ステップアップ・デッサン
多摩美グラフィック2012年度入試(デッサン)を振り返って
本年度の多摩美術大学グラフィックデザイン学科デッサンの課題は、
以下の通りでした。
『「紙を折る両手」を想定してデッサンしなさい。』
条件は「設定は自由/B3サイズ縦位置使用」でした。


●臨場感のある具体的な「設定」ができること

出題に対してまず意識したいのが、
臨場感のある具体的な設定することです。
条件の「設定は自由とする」というのは
守らなければならない決まりではなく、
積極的に取り組んでほしいという要望なのです。
手で紙を折るという動作の中の美しさについて、
あなたの考えを形にしてほしいということです。
作者は自分の思う美しさを提案するという姿勢が必要です。


●「動作」をデッサンするということ

出題では「折る」という動作が問われています。
もっとも注意したいのは、
すでに折られた紙を漫然と持っている、
という状態になってテーマが曖昧にならないことです。
これは普段からいくつかのパターン(ポーズ)を決めて、
そればかりを繰り返し練習するような方法では、
陥りやすいことです。


今年度本校で実施したいくつかの課題を紹介します。

夏期講習「両手で折り紙を折る状態を想定して描きなさい」
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冬期講習「両手で新聞紙を持つ状態を描きなさい」
入試直前模擬問題「両手で地図を持つ状態を想定して鉛筆デッサンしなさい」
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具体的な設定で、
自然な動作を表現するためには
ただ「紙」という漠然としたイメージではなく、
紙の具体的な性格を定めことが必要です。

普段から自然な動作の中の美しさを
時間をかけて研究することが大切です。







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by yozokobu | 2012-03-14 15:32 | ステップアップ・デッサン
ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第9回(作品 no.6)
「片手とカード」のシリーズは、6作品目の今回が最後になります。
この作品はA3画面枠をとって、
その枠内に描くという方法のものではありませんが、
手をデッサンする上で参考になる点が少なくない作品なので紹介します。

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[アイデア]
この作品はカードを引き抜くような動作をモチーフにしたもので、
特殊な発想のものではありませんが、
動きがたいへん自然に演出されています。
何よりアングルが確かなので、量感やスケール感があります。
(アングル:対象を見る角度/観察者と対象との位置的関係)

[演出:アングルと動き]
下のfig.6_1は観察者の目の高さを示したものです。
fig.6_2は、このポーズの中で正面を向いている部分を赤で囲んだものです。
それに対して、青線で囲んだ部分(カードの面)は、
少し見上げることになります。
そして緑で囲った腕の部分は見下しになります。

このポーズは「逆くの字」型に手首を折り曲げながら、
腕を奥に倒して、傾斜をつけています。
この配慮が、全体の動きをとても自然にしながら、
立体的な印象を高めています。
この作例のように腕を前後に傾斜させ、手首にひねりを加えることは、
自然な動作を演出する上では、基本中の基本と言えます。

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[光の演出]
カードを挟んでいる親指と人差し指の間から、
光が内側に差し込んでいますが、
それはとても大切な働きをしています。
光は中指などを照らして陰影をつくり、
その複雑なコントラストが、視線を引きつけ導きます。
また親指の輪郭部(際)の
コントラストの幅を非常に豊かにして、
存在感を際立たせています。

[描写]
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この作品は全体感が緊密です。
たとえば各部の傾斜は、画面右上に集まり、
全体をまとめてます。(fig.6_3)

fig6._4の赤い丸印は特に盛り上がっている部位を示しています。
そして赤い線は代表的な稜線を示しています。
この作品では、
その盛り上がっているポイントの配置に気を配り、
とても良いバランスで描き込まれていて、
それが快く緊張感を高めています。

[図と地]
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手とカード、つまり図全体を
シルエットにして考えてみましょう。(fig.6_5)
手の右側は、張りのある伸びやかな形であるのに対して、
左側は凹凸のある複雑な形になっています。(fig.6_6)
手の位置を画面右側ギリギリに配置しすることで、
カードを引く動きを強調しています。
また左側の背景を広くとることで、
カードや指の複雑な形のリズムを見やすくしています。

時にはこの例のように、
背景をアンバランスにすることで、
制作意図を明瞭に伝えることができます。

今回でステップアップ・デッサンは、少しの間お休みして、
その間に、これから初めてデッサンしようという人を
応援するコーナーを開設する予定です。
現在、その準備を進めています。
ステップアップ・デッサン同様、よろしくお願いします。 

byヨゾコブ
by yozokobu | 2010-06-22 01:53 | ステップアップ・デッサン
ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第8回(作品 no.5)
B3画用紙の中央にA3画面枠をとり、その枠内に
「カードを持った片手」を配置して描くシリーズの5作品目です。
今回はカードを真横から見るというアイデアの作品を紹介します。
真横と真正面だけの構成でありながら、動きを感じさせる作品です。

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by yozokobu | 2010-06-14 21:56 | ステップアップ・デッサン
ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第7回(作品 no.4)
今回は画面感覚に優れた作品を紹介します。
真横から現れた手は、しなやかに波打ちながら
画面を横切って伸びています。
視線は腕から指先、カードを経由して、床面の影を伝わり、
背景の奥のほうに導かれます。

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by yozokobu | 2010-06-06 14:59 | ステップアップ・デッサン
ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第6回(作品 no.3)
今回の作品は、手とカードの関わり方や形の変化を
一筋の流れの中に一気にまとめた作品です。
この作品のアイデアは、手の形とカードの形の凹凸を
反転させたところに面白みがあります。

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by yozokobu | 2010-05-30 10:03 | ステップアップ・デッサン
ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第5回(作品 no.2)
「手とカード」シリーズの2作品目の今回は、
カードを水平に持つ、というアイデアの作品です。
設定が明解で構築的な印象の作品ですが、
随所に繊細な配慮がなされた秀作です。

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by yozokobu | 2010-05-23 16:21 | ステップアップ・デッサン
ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第4回(作品 no.1)
今回からは、さきに紹介した6点の作(「手とカード」シリーズ)について、
さらに掘り下げて見ていきましょう。
少し文章が長くなりますが、その中から参考になることが一つでもあって、
今後の制作に役立てば幸いです。

まず最初のこの作品は、二本の指でカードを挟み込むように支えています。
手が画面左下からぬっと立ち上がって、
大きく広がろう、膨らまそうとする動きで、
拡張感・膨張感の強いポーズをなっています。
手とカードとの関わらせ方=アイデアが明解で、
無駄がなく、力強い作品になっています。

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by yozokobu | 2010-05-16 10:01 | ステップアップ・デッサン
ヨゼミ・メソッド2 「片手のデッサン」第3回
第3回目の今回からは、実際の実習で描かれた学生作品の中から、
下の6点の作例をお借りして、解説を加えて紹介していきます。
モチーフはすべて「片手で一枚のカードを持つ状態」で、
B3画用紙の中央にA3画面枠をとって、
その枠内に鉛筆デッサンしています。

6点それぞれの発想(狙い・制作意図)と構図の効果を
比較しながら詳しく解説していきますが、その前に、
今回はカードの持ち方に対する「発想」や「着眼」について、
まず簡単に比較しておきましょう。

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by yozokobu | 2010-05-09 03:40 | ステップアップ・デッサン